不用意に「貞子みたい」といった私がいけなかったよ
貞子知るわけないじゃん。
風呂場にゴーグルを常備。いつでもスタンバイ。湯船に潜りまくるのが常のHさん。
(近ごろは「水中メガネ」なんていわないもんなんですね)
ざぶざぶ。
ざっぱーん。
ごぼごぼごぼ。
洗い場にいた私は、濡れた髪の毛で顔面をびしゃびしゃにしながらぬばぁっと浮き上がってくるHさんを見てなんの気なしに、「貞子みたいだね」と声をかけました。
貞子知るわけないじゃん。とは口走ってから思ったこと。
貞子とは何か。
Hさん 「さだこってだれ?」
私 「えーと、ひとりで井戸の中に住んでる人。井戸から這い上がってくるんだよ」
Hさん 「しらゆきひめのいど?」 ←ディズニー白雪姫に出てくる井戸
私 「いや、どこの井戸でもいるんじゃないんだ。貞子のお家としての井戸があるんだね」
Hさん 「さだこどうしていどにいるの」
私 「井戸で死んだんじゃなかったかな」
Hさん 「さだこはおばけなの?」
私 「おばけだね」
Hさん 「Hのところにもくる?」
私 「貞子は辛く苦しく悲しい目に遭って死んだから、じぶんをそうさせた相手や、その相手に似てるような近しいような悪い人のところにしか来ないと思うよ」
Hさん 「Hのところにもくる?」
私 「来ないよ。貞子に悪いことはしてないいい子だから来ないよ」
Hさん 「さだここわい?」
私 「怖いよ」
Hさん 「おかあさん、さだこにあったことある?」
私 「会ってない。見ただけ」
Hさん 「さだこっておんなのこ?」
私 「貞子は大人の女の人」
Hさん 「どんなかお?」
私 「髪に隠れてるからちゃんと見たことないよ」
Hさん 「かわいい?」
私 「だから顔ちゃんと見てないって。目玉が飛び出てるような感じだったかな」
Hさん 「さだこはぞんび?」
私 「ゾンビかなー?おばけじゃないかな」
Hさん 「ぞんびとさだこどっちがつよい?」
私 「“ゾンビ”は“人間”みたいなことで、“貞子”は“H”みたいなお名前ね」
Hさん 「さだこはかっぱなの?」
私 「河童ではないよ。河童は妖怪」
そんなにまで貞子に興味津々なの?
困るよ。
エンドレスな問答。
貞子を観たり読んだりしたのは大昔のこと過ぎて、私の発言はちょうてきとう。
文に書き起こすと、さらさら回答しているようですが、記憶を掘り起こして考え考えでした。
ついには呼称が「さだこちゃん」に。
Hさんは、なんでだかわからないが貞子をいたく気に入った様子で、手と手を組み合わせてお祈りのポーズ。
「さだこちゃん。Hのところにきてください。なむなむ」
嫌だ!!
ほんとに来そう!!
呼ばないで!!
なんていうか、最後の「なむなむ」がリアルに呼びそうで嫌!!
「貞子はほんとに怖いんだから呼ばないで!うちには来なくていいんですよ!!」
その後はしばらく首を傾げて思案顔。
最後、
「HはいいこなのでHのところにはこないでください。でも○○ちゃんはわるいこなので、きょうHをたたいたり、ばかとかゆったので、○○ちゃんのところにはいってください。なむなむ」