Hさんの時間

5歳のこどもと暮らす日々のことなど

ビロードのうさぎ

ビロードのうさぎ

本棚の自前の絵本はなかなか出してもらえない。

Hさんは、しょっちゅう図書館で絵本を借りて、返すまでの間にそれらを繰り返し読んでいます。そうすると、本棚に並んでいる自前の絵本に出番がなかなか回ってきません。

自前の絵本は、プレゼントされたり気に入って購入したものだったりするのに、逆に読んでもらえない。なんだか残念な結果です。

 

大人だって読みたい絵本はある。

Hさんが読む。といってもHさんはまだまだひとりで読書に没頭したりはしてくれません。要するに私が読み上げるのです。

そうすると、私にだって好みがある。これよりあっちのほうがいいよ。しばらくあれ読んでないよね。これ好きだなあ。これ私読みたくないひとりで読んでみたらいいんじゃない?

でもHさんは空気を読む能力に長けているので、私にやる気がないと見て取ると、私が読みたくなるような絵本を持ってきます。

 

ビロードのうさぎ

私が読みたくなってしまう絵本のひとつがこのビロードのうさぎです。

この本は、図書館の本ではなく自前の本です。Hさんが2歳のクリスマスに実家の母が送ってくれました。

2歳児にはハードルの高い文字数と凝った展開に、貰った頃はぜんぜん集中力が追いつきませんHさん。対して、ぐっとくるクライマックスに読んでる私は感極まって涙声。

Hさんからしたら、おかあさんがどうかしちゃった。。。ってなものです。

しかし、もう5歳です。ストーリー展開にもばっちりついていけるようになりました。

私だって涙声を抑えて情感たっぷりに読み上げる訓練(単に回数を重ねただけですが)を積みました。

それで久しぶりに読んでみたら、脳内快感物質でも分泌されたのか、すごくいい気分になってしまいました。

 

ちょっと気にかかることはありますが。

 主人公の“ぼうや”は、外国の、たぶん富裕層のこどもです。

お屋敷に住んでいて、子守専属お手伝いさんがいて、病気になると主治医がやってきて、静養できる海辺の別荘もお持ちです。

件のビロードのうさぎ自体が素敵なクリスマスパーティのときに贈られたプレゼントのうちのひとつ、という設定です。

ちょっと古い外国の映画でも観ているような気分と並行して、いい暮らししてんなあおい、という下世話な視点が己の気分を邪魔します。

きっとこの子は大人になったら狩猟したり高級車を乗り回したりする。エリート寄宿学校に進んでお友だちと悪いことしたりして女の子を泣かせることだってあるんだろう。

なにさ!おかたづけをお手伝いさん任せにするなんて!手前でかたづけろ!ろくな大人にならないぞ!

ステレオタイプな偏見に満ちていますが、生活に汲々としている庶民としては、お手伝いさんのナナの「まぁ、めんどくさい」という台詞にいちばん実感がこもってしまうしだいです。

 

 

すごくいいお話なんですけどね。ほんとに。